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「本間、俺の身体はポンコツや。いっそ全身機械やったらよかったのに」
「何言ってるんだ。すぐ治る」
松本は美海に毛布を掛けた。
顔を覗くと涙の跡がある。
「なぁ、カッコ悪いけど、本音言っても良い?他の皆には…言いたないねん…」
山崎の辛そうな顔に松本は胸が締め付けられた。
「…あぁ」
美海が目を覚ましたのはもう夜中だった。
「…………」
ゆっくりと顔を上げた。
頭をガシガシと掻く。
ヤバい。寝てしまった。會計審計服務
山崎は先程とは違い、規則的な寝息を立てている。
軍艦は相変わらず機械音を立てながら海を渡っているのだが、波は静かだ。
ぼんやりと椅子に座った。
それでも目が冴えることはなく、視界が曇っている。
「もしかして…」
山崎を見て美海は呟いた。
もしかして、大丈夫なんじゃないか?
山崎の静かな寝息にそんな期待を抱かずにはいられない。
いや。大丈夫。
山崎はなんだかんだ言って急にピンピンになるはずだ。
それに、回復してきている。大丈夫だ。
カチャ……
ドアが開き、ヌゥっと人影が現れた。
「美海くん…?」
「松本先生」
「起きたのか」
コクリと美海は頷いた。
「後は私が見ているから君は寝ていなさい」
美海は首を横に振った。
「休息も大切だよ?」
「それより私は患者を看ることが大切だと思います」
髪の毛がボサボサの美海に言われても説得力はないが、有無を言わせない強い眼差しに松本は頷いた。
「あの……」
「ん?何?」
「……いえ」
山崎さん。治りますよね?
そう聞きたかったけど、美海は言わなかった。
そこで、否定されたらきっと、きっと不安で押し潰されるから。
「美海くん」
「はい?」
「患者を看ることも大切。寝ないのも分かった。だが、外の空気ぐらい吸ってきな」
美海は立ち上がると山崎のベッドの隣にある格子に近づいた。
手を広げて深呼吸をする。
「はー――…。吸いました」
美海は真面目な顔で言った。
「あ、いや、そうじゃなくてさ…。甲板にでも上がってきて空気吸ったらってこと。今日は星が綺麗だからね」
格子から空を覗く。
確かに星が綺麗だ。キラキラと輝いている。
美海は少し考えた後、頷いた。
「……じゃあ、すぐに戻ってきます」
「うん」
美海は羽織を取ると、部屋を出ていった。
山崎の部屋にずっといたため、軍艦に乗った時以来だ。外に出るのは。
美海はカンカンカンと甲板に出るための金属の階段を登っていく。
夜中で寝静まっているため、その音だけが妙に響いた。
ギィッ…
最後の一段を踏むと、重たいドアを押した。
「俺な、今めっちゃめちゃ怖いねん…」
山崎はシーツをきつく握り締めた。
「皆治るって言うけどさ、なんか、身体の自由が聞かへんことって、こんなに…こんなに怖いことやったんやな…!」
そう言う山崎の目には涙が溜まっていた。
「俺さぁ…。どうなるんかなぁ?俺の身体…もう感覚ないねん。自分の身体が自分の身体でなくなる。これが一番怖い…」
ふいに涙が流れ落ちた。
「本間…どないしよう…!俺!俺…!」
松本はそんな山崎に言葉をなくした。
自分はこの子を助けられないのだろうか…。
「松本…先生…」
「ん?」
「美海ちゃんや皆には内緒にしてや?思いっきり…泣いてもいい?」
「あぁ…」
その瞬間、山崎は声を上げて泣いた。
監察という仕事故、いつでも死は覚悟していた。
だが、今は自分がおかしくなっていくことが怖い。
怖くて怖くて堪らない。
ブワッ
「うわっ」
思い切り風が吹いて髪が顔にかかった。
仕方なく髪を耳に掛ける。
さむっ…。
風が冷たい。
上を見上げて見ると真っ黒い紙に白のインクを沢山落としたような星空が広がっていた。
冬の空は綺麗だ。
流れ星。
美海は手を合わせた。
山崎さんが早く良くなって戦争が終わりますように。